“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

「決められない組織」はなぜ生まれる?

こんばんは。
今日もお読みいただきありがとうございます。

本日のテーマは『「決められない組織」はなぜ生まれる?』
これを意思決定に対する人の習性からまとめてみたいと思います。


私のクライアントさんでも、少なからずこんな事例があります。
・何年も前から、同じパターンを繰り返している
・外部環境が変化しているのに、まだ改革する意思がない
・仮に誰かが改革しようとすると、全力で潰しにかかる
・何も変えないで、目先の数字にばかりこだわる

この最たる例が「大企業病」と言われるものですが、
中小企業などでも、そこそこの歴史を持つ組織で多い様に思います。
ベンチャー企業でも、急成長が止まった時に、起きている傾向があります。

経営者が大号令をかけて、目先の数字を追いかけたとしても、
それで成果があがるのは、長くてせいぜい3年です。
その3年の間に、自らを変革し、外部環境の変化に対応するなら良いのですが、
ほとんどの組織では、目先の数字を追いかけ続けてしまいます。

はっきり言いますが、打出の小槌じゃないのです。
そんなに都合よく、目先に数字が転がっていることなどないのです。
何年も目先の数字を追いかけても、成果があがらないのは当たり前なのです。


なぜ「決められない組織」が生まれるのか?
ここには、人間の本能的な習性が大きく関わっています。

<①利益と損失に対する人の習性>
人は、利益に対しては確実性を重視し、損失に対してはリスクを取る
習性を持っています。

例えば、こんな2つの質問をするので、少し考えてみてください。

「親がお小遣いをくれるとします。以下のうち、どっちを選びますか?」
 A) 無条件で10万円もらえる
 B)じゃんけんで勝ったら20万円もらえるが、負けたらもらえない

「親の借金をあなたが肩代わりするならば、以下のどちらを選びますか?」
 C)無条件で10万円返済する
 D)じゃんけんで勝ったら借金はチャラ、しかし負けたら20万円返す


これは、専門家の間ではプロスペクト理論と言うらしいのですが、
1つ目の質問に対しては、Aが多数派、
2つ目の質問に対しては、Bが多数派になるのだそうです。

つまり、人間は本能的に「確実な利益」と「損失への回避」を
重視するという本能があります。

「決められない組織」で問われていたのは、将来の利益に対するスタンスです。
将来の利益を得るために、リスクを取るか?取らないか?です。
本能に従えば、当然リスクを取らずに確実な方を重視します。


<②リスクを取る意思決定は、無限にあるという事実>
人が物事を短時間で記憶したり、意思決定できるのは、
選択肢の数が、最大で7(±2)以内までと言われています。

この7(±2)を超える選択肢や可能性を目にすると、
人は本能的に意思決定を放棄したり、延期するのだそうです。

しかし、現実世界における解決策は、ほぼ無限に存在します。
もちろん、何をすれば良いのか?という模範解答など存在しません。

仮に①でリスクを取るという選択をできたとしても、
次に、この無限に存在する選択肢の壁が待っているのです。
「決められない組織」になる2つ目の壁は、ここに存在します。

「やってみようと思ったけど、結局やめました…」という経験は
誰にでもあると思うのですが、可能性が多すぎるという事は、
人間にとって一種のストレスなのです。


<③リーダーシップのジレンマによる挫折>
学生時代でも社会に出てからでも良いのですが、
初めてリーダーを任されたとき、
周りのメンバーの意見が、あまりにもバラバラで、
困った経験をしたことは、誰にでもあると思います。

リーダーが意思決定を求められたとき、
そこには有形無形の「期待感」が存在します。
リーダーは意思決定により成果をあげることを期待されます。

意思決定の対象が、技術的な対処によって解決できる場合は良いのですが、
あとまわしにされた、技術的には解決できない本質の課題に対しては、
誰かの期待を裏切ってでも、意思決定を迫られるケースが存在します。

そもそも、期待とは人によってバラバラなのであり、
それがたとえ正しい意思決定だとしても、
全員の期待には応えられないどころか、
一部の人には損失を迫るケースもあるのです。

この状況で、充分な信頼を勝ち得ていないリーダーの選択は、
往々にして「見なかったことにする」というものです。
ここにも、意思決定を阻む壁が存在するのです。


<まとめ:決められない組織という文化を変える>
ここまで読んでいただいて分かるように、
「人間は本能的に、決められない組織をつくりがち」
と、言うのが事実です。

経営者からリーダーに至るまで、大小の意思決定を延期してきた結果、
長年かけてつくりあげた結晶が、「決められない組織」なのです。

一度つくりあげてしまった文化は、変えようと思っても非常に困難です。
対処するには、全くゼロから新しい文化を創る覚悟を決めた方が、
結果として早く浸透します。

決められない組織を育ててしまった原因は、元を正せば、
「利益に対する姿勢」です。
はっきり言えば、利益を目的にしているから、こうなるのです。

何度も言う通り、利益は存続の条件に過ぎません。
組織の真の目的は、貢献にあります。

決められない組織というジレンマにはまらない為にも、
組織の“もくてき”という道具の使い方を見直してみてはいかがでしょう?