“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

感情のマネジメントを、仕事の「動機づけ」に適用する。

こんばんは!
今日もお読みいただきありがとうございます。

前回に引き続き、「感情のマネジメント」が成果につながるというお話の第2弾。今回は少し角度を変えて、「人の動機づけ」という視点からまとめてみたいと思います。


ほんの50~100年ほど前まで、“人に仕事をさせる” 手段は、主に『恐怖』による動機づけでした。ムチを打って人を動かした肉体的恐怖に始まり、産業革命以降は経済的恐怖、時代によっては精神的恐怖を活用した例もあります。

さすがに20世紀になると『恐怖(ムチ)』による動機づけの時代は終わりましたが、替わりに『報酬(アメ)』を活用した、外部要因による動機づけの時代が続いてきました。

外部から何か刺激(恐怖や報酬)を与えることで、人を動かそうとする動機づけの方法を、「外発的動機づけ」と言います。これに対して、人が本来もつ “やる気” や “モチベーション” を活用して、自発的に動きたい状況を作ることを「内発的動機付け」と言います。

実はいま、「外発的動機づけ」によるマネジメントが効きづらい時代に入りつつあるのだそうです。 “肉体労働の時代” から、“知識労働の時代” にシフトした事により、「外発的動機付け」が使いづらくなってしまったのだそうです。


最近の行動経済学では、高い給料を払ってもそれが人のやる気に直結する訳ではない事、成果につながらない事などが分かってきています。それどころか、金銭的な報酬は使い方を間違えると、人のやる気を下げてしまったり、人が本来持っているアイディア発想力を制限することが分かってきています。

「〇〇出来た人にはボーナスを支給する」と言った瞬間から、効率を求めて手抜きをはじめる事例。チームワーク抜群のチームに、コスト計算や効率を持ち込んだ瞬間から、チームが機能しなくなる事例。ボランティアをビジネスにした瞬間から、仕事にやる気を失ってしまう起業家の事例。

あげたらキリがないほど事例はあるはずなのですが、不思議な事にビジネスの世界では、いまだに「高い給料を払えば、やる気を出してくれるだろう」と考えてしまう人が多いのです。


もちろん、金銭的報酬のような外発的動機づけが無意味な訳ではありません。知識労働の時代が一定レベルの安定した経済基盤を必要とするのと同じく、「内発的動機付け」が機能するためにも、安定した経済基盤が必要だと言われています。「何かあっても何とか生きていけるだろう」という安心感がベースになくては、内発的動機づけは機能しづらいのです。

外発的動機づけと、内発的動機づけ、それぞれに効用があり、得意分野があります。これを見極めた上で、双方の良いところを組み合わせて使わなくては、これからの時代に成果をあげることはできません。特に知識を主体とする組織においては、この傾向が顕著になると思います。


内発的動機づけを行うとは、シンプルに言えば「社員がやる気を出して働く会社をつくること」です。言葉で言うのは簡単ですが、実際にやろうと思うと「はて?」となってしまう方も多いのではないでしょうか?

特に経営に対する高い責任を持つ人ほど、苦慮するのではないかと思います。経営者、リーダーの立場にいる人にとっては、自己評価とも関わる重大な問題なのです。「自由闊達にやらせた結果、業績が下がりました…」では、職責に対する責任を果たしたことにはなりません。

そもそも、職責を果たすために外発的動機づけを使ってきたのですから、これを使わないと決意することは、清水の舞台から飛び降りるに等しく感じられるのではないかと思います。

内発的動機づけを活用した組織運営に取り組むには、最初に自社のコアとなる事業領域の特定から入らなければなりません。ほとんどの企業では、コアとなるいくつかの事業領域(もっと言えばコアな活動)さえ正常な状態を保っていれば、他を多少いじっても、業績にはほとんど影響しない事が多いのです。

その上で、組織全体に内発的動機づけの元となる、「組織の理念」や「顧客の定義」「組織のミッション(使命)」など、貢献の方向性を定めていきます。指示・命令のマネジメントではなく、気付きを与えて自発的行動を促すマネジメントへとシフトしていきます。個々の社員やスタッフが、自己目標管理をできる環境づくりを行っていくのです。

細かく書き始めると、今回のエントリーにはとても収まりきらないので、今日はこの位にしますが、「自分で目標を決め、自分で考え、自分で動く」という自己目標管理を行う鍵が、前回のエントリーにも書いた「感情のマネジメントと成果をあげる意思決定」の話なのです。


以前もドラッカーを引用して説明したように、『人の働き』を効果的にする事と、『仕事』を効果的する事は、まったく視点も方法論も異なります。ですが、この2つは掛け算です。『仕事×働き=成果』なのですから、双方に適切な手法を用いて、それぞれの効果を高めなければなりません。

知識労働の時代になったいま、『働き』を効果的する手法を見つけられていない組織は、四苦八苦しているのではないかと思います。『働き』を効果的に引き出すために、「感情」の特性や効果を知り、マネジメント知識の1つとして最大限に活用していくことが、重要なのではないでしょうか。