“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

ザックJAPANを『チームの成果』という視点から考える。「成果をあげる上司」 は、部下をどのように育るか? ーその2ー

こんばんは!
いつもお読みいただきありがとうございます!

ザックJAPAN、とっても残念でした。もうちょっと頑張ってくれるといいな~、、、と期待して見ておりましたが、最後までどこかチームの歯車が噛み合っていなかったですね…。

とはいえ、4年間のすべてを賭けて戦った時間の素晴らしさは、結果によって左右されるものではありません。選手やスタッフのみなさんには、胸を張って帰国してもらえたらな~と思う次第です。


さて、にわかファンならではのワールドカップの楽しみの1つ。それは「結果論でアレコレ論じること」(笑)

今日はザックJAPANを『チームの成果』という視点から考えたとき、どんな問題が考えられるのか?を、勝手気ままに私の視点からまとめてみたいと思います。

この内容は、前回からスタートした「成果をあげる上司シリーズ」の一環でもあります。前回指摘した部下育成における3つの課題とも、大きく関連するのです。

 【3つの課題】①マネジメントに対する誤解
        ②組織における共通の目的
        ③感情のマネジメント

これら3つの課題のうち、今日は「②組織における共通の目的」の教材として使わせていただこうと思います。



今回のザックJAPANのチームとしての目標。それは、「W杯優勝すること」でした。4年前の南アフリカ大会が終わった直後に、本田選手が公言したのが最初だったと記憶しています。

実はこの目標こそが、ザックJAPANが「チームとしての成果」をあげづらくさせていた要因ではないだろうか?と、考えています。 あくまで個人的な見解ですが、組織論から考えると、ここに要因がある様に思えてならないのです。

主なポイントは3つあります。
 ①最上目標であること
 ②自己視点の目標であること
 ③結果目標であること
これを私なりの視点から、解説してみたいと思います。


【ポイント①:最上目標であること】
いきなり結論めいた事を言ってしまうと、この『最上目標』を掲げたことが、今回の敗因の8割を占めているかもしれません。それくらい重要なポイントだと思っています。

さきほども書いた通り、4年前の南ア大会直後に本田選手が「次はW杯を優勝する」と宣言しました。私の記憶ではザッケローニ監督が就任するより前の事だったと思います。実はこの瞬間、ザックJAPANの運命は決まっていたのかもしれません。

『最上目標』を掲げるということは、「誰も否定できない」という事になりかねないのです。選手がW杯優勝を目指すと言っているのに、監督が「いや、やっぱりベスト8を目指す…」とは、当然のことながら言いづらいのです。

もちろん本田選手に悪意はありません。彼の性格からすれば、当然のことを公言したまでのこと。しかし、この瞬間からチームは彼に依存しはじめたのではないかと思います。おそらく監督でさえも…。

『最上目標』を掲げる弊害とは、まさにここにあります。

アジア3次予選の頃だったでしょうか、本田選手がケガで長期離脱した際、チームは絶不調に陥りました。W杯イヤーの今年、本田選手は明らかにコンディションを落としていましたが、ザッケローニ監督は本田選手を起用し続けました。

要するに、彼を外せなかったのです。なぜなら、既にチームそのものが本田選手に依存していたから…。彼なしでは、チームは機能しない状態になっていたのだと思います。

はっきり言えば、これは監督のミスでもあります。そもそも4年前から、根本的に人心掌握ができていなかったのです。

本田選手が掲げた「W杯優勝」という最上目標を否定できない以上、結果目標ではない別の目標、もっと言えば『チームの目的』を掲げなければならなかったのです。

どこかで監督は気づいたかもしれませんが、時すでに遅し…。最後まで「チームJAPAN」ではなく、「本田のチーム」だったのだと思います。あれだけ連帯感と一体感のあるチームでありながら、本田依存から抜け出せなかったのです。


【ポイント②:自己視点の目標であること】
【ポイント③:結果目標であること】
では、ザッケローニ監督はどうすれば良かったのか?

私の答えはこうです。
  ◇結果以外の“目的”を、チーム植え付けること
  ◇貢献を目的とすること

本田選手が「W杯優勝」という最上目標を掲げてしまった以上、監督がそれを撤回することは難しかったのだと思います。もちろん選択肢としてはあったでしょうが、選手のモチベーションや、組織の統制という面を考えれば、より低い目標を掲げることは困難です。

この際、できることは“論点をずらす”という事なのだと思います。ラッキーな事に、本田選手は「W杯目標」という結果目標しか掲げていませんでした。もっと人間的に大きな視点から、『チームの存在意義・ミッション』を掲げることも出来たのです。

母国であるイタリアから、文化も言葉もまったく違う日本に来たザッケローニ監督1人にこれを要求するのは、かなり酷だったのかもしれませんが、サッカー協会を含めたサポートがあれば可能だったのではないかと思うのです。

なぜなら、「なでしこJAPAN」という前例が、日本にはあるから。なでしこの澤選手が、W杯優勝後のインタビューで答えていた内容に、すべての答えがあるのです。最後にこの澤選手のインタビューを引用して、今日のエントリーを終わりたいと思います。それでは!

“We knew that what we were doing here could be about a little more than just a football tournament. If winning this makes one person, someone who lost something or someone or was hurt or damaged by the events that touched our country, feel better for even one moment, then we have really achieved a most special thing. If it makes everyone happy and joyful and gives them a reason to cheer after such difficult times, then we have been successful. Japan has been hurt and so many lives have been affected. We can not change that but Japan is coming back and this was our chance to represent our nation and show that we never stop working. This is like a dream to us and we hope our country shares it with us.”

我々のしていることは、ただサッカーをするだけではないことを、意識してきた。
我々が勝つことにより、何かを失った人、誰かを失った人、怪我をした人、傷ついた人、彼らの気持ちが一瞬でも楽になってくれたら、私達は真に特別な事を成し遂げた事になる。

こんな辛い時期だからこそ、みんなに少しでも元気や喜びを与える事が出来たら、それこそが我々の成功となる。日本は困難に立ち向かい、多くの人々の生活は困窮している。

我々は、それ自体を変えることは出来ないものの、日本は今復興を頑張っているのだから、そんな日本の代表として、復興を決して諦めない気持ちをプレイで見せたかった。今日、我々にとってはまさに夢のようで有り、我々の国が我々と一緒に喜んでくれるとしたら幸いです 。