“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

「成果をあげる上司」 は、部下をどのように育るか? -その3ー

こんばんは!
今日もお読みいただき、ありがとうございます♪♪

前回、前々回に引き続きまして、「成果をあげる上司シリーズ」の第3弾。部下育成における3つの課題のうち、<①マネジメントに対する誤解>を考えてみたいと思います。今日はその誤解のうち、『組織の目的に対する誤解』について。

 【参考:3つの課題】①マネジメントに対する誤解
           ②組織における共通の目的
           ③感情のマネジメント

コンサルティングの現場で「御社の目的は何ですか??」 「あなたの部署の目的は何ですか??」と伺うと、かなりの確率でこんな答えが返ってきます。

「売上目標、利益目標の達成です!」
であるとか、
「利益の最大化です!」
など。

どうやらこれは、少なくとも70年以上前から続いている、組織の目的に対する誤解の様です。ドラッカーは1954年の著書「現代の経営」の中で、以下のような記述を残しています。

『企業とは何かを問われると、たいていの企業人が利益を得るための組織と答える。たいていの経済学者もそう答える。この答えは間違いであるだけでない。的外れである。(現代の経営より)』

いつ頃からこんな勘違いが横行したのか分かりませんが、組織の目的に対する誤解は、ずいぶん長年に渡って続いている様です。お恥ずかしながら私自身もドラッカーを学ぶまで、みなさんと同じ誤解をしていましたから…。


「人生の目的」を問われて、すらすらと答えられる人はあまり多くないと思いますが、少なくとも私たちの人生が「お金を目的としている訳ではない」というのは、共通見解と言っても良いのではないかと思います。

「お金とは、人生を豊かにする手段に過ぎない」
これが、私たちのお金に対する認識です。
(もちろん、お金は多くあるに越したことはありませんが…笑)

むしろ、“人生を豊かにする” という言葉の方にこそ、私たちはより多くの意味を感じるはずであり、お金は付随する条件に過ぎないのです。


以前もこのブログに書きましたが、組織が成果をあげるためには、「仕事を効果的にすること」と、「人の働きを最大化すること」の2つを考えなければなりません。

“仕事”は論理的に分析し、誰がその仕事をやっても一定の成果が出るように設計するものです。しかし、“人の働き”は論理ではありません。主観的であり、感情なのです。そこで働く人の感情によって成果が左右されます。これをいくら分析しても意味はないのです。

「成果をあげる仕事の設計」と、「人をして成果をあげさせること」は、そもそも全く思想が異なるものなのですが、どうやら私たちが慣習的に続けてきたマネジメント手法は、これを無理やり1つのものとして扱ってきた様です。

ここにマネジメントにおける誤解が存在します。

「売上や利益を最大化する仕事のやり方」を客観的に設計することはできますが、「売上や利益を動機として、人の働きを最大化させること」は困難なのです。

組織が成果をあげるためには、「仕事」と「人の働き」を全く別のものとして扱い、各々をマネジメントしなければなりません。


この「仕事」と「人の働き」という異質の2つを結びつける接着剤を、ドラッカーは『貢献』としました。組織の使命は、社会に貢献して成果をあげる事と位置づけたのです。その使命を定義することを、マネジメントの責任としました。

『企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。組織が存在するのは、組織それ自体のためではない。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく手段である。したがって問題は、その組織は何かではない。その組織は何をなすべきか、あげるべき成果は何かである。(マネジメント より)』

『貢献』を中心に据えるとき、私たちは組織における成果のみならず、働く個々人の成果も手にすることができます。「働きがい」や「成長の実感」を手に入れる事ができるのです。


売上や利益を中心に据える組織では、そこで働く人たちも“個人の利益”を中心に動く様になります。組織の利益と、個人の利益がぶつかり合います。効率が文化の根底にある組織では、そこで働く人たちも効率を考える様になります。

私たちは間違ったマネジメントの慣習に従うことにより、図らずも「効率的に個人の利益ばかりを考える」組織を作りあげているのです。これが「自分で考えて動かない部下」を生み出している原因の1つなのだと知らなければなりません。

マネジメントに対する誤った理解さえ正せば、もともと日本人は、「働くこと」に対する美徳を持った民族です。これだけで、組織がアッという間に活性化、成果をあげた事例は、山ほどあります。

マネジメントの立場にいるものが、他責ではなく自責の姿勢でマネジメントを見直すこと。これが大変重要なのではないかな~、と思う次第です。