“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

「成果をあげる上司」 は、部下をどのように育るか? -その6ー

こんにちは!
いつもお読みいただきありがとうございます。

月曜日恒例となりつつある「成果をあげる上司シリーズ」。いつの間にやら6回目です。今日も部下育成における3つの課題の中から、引き続き<①マネジメントに対する誤解>をお届けします。

 【参考:3つの課題】①マネジメントに対する誤解
           ②組織における共通の目的
           ③感情のマネジメント

このテーマ、すでに、「利益目的という誤解」「人のマネジメント上の誤解」「成果に対する誤解」という3テーマを書いていますが、パッと思いつくだけで、まだ3つくらいはありそうです。いまだにゴールイメージのないまま書き進めていますが、よろしくお付き合いください(笑)


今日は①のマネジメントに関する話でありながら、③の感情とも絡むお話。「強みの活用についての誤解」がテーマです。まずはドラッカーの一文を引用させていただくことにしましょう。

『成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。結果を生むには利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを動員しなければならない。強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。(経営者の条件より)』

組織・個人に関わらず、成果をあげる源泉は「強み」以外にはありえません。私の知る限り、弱みによって成果をあげている人を見たことがありません。

「強み」と言うと、他人との相対評価による得意・不得意を連想する人も多いと思いますが、ここで言う強みとは「その人が生まれ育った過程で身に付けた(性格的)資質」を指します。

たとえば絵が得意か?不得意か?という現在の評価は、「強み」とは何の関連性もありません。たしかに小さい頃から絵が得意な子供はいますが、この子にとって「絵を描くのが得意なこと」は強みとは言えないでしょう。

逆に小さいころは絵が不得意だったけど、なぜかアートの世界に心惹かれて、今はデザインを仕事にしている人もいるかもしれません。もし絵が不得意でありながらも、デザインの世界に生きるだけの何かを身に付けてきたとしたら、この場合はなにかしらの「強み」を使ったと言えるかもしれません。

強みとは技術や結果の評価ではありません。しかし、私たちは安易な結果判断の下に、「強み」を狭く捉え過ぎてしまう傾向があります。これが人の「強み」の活用をさまたげています。


ドラッカーは、人の「強み」が活かされる組織をつくるために、
 ・仕事を適切に設計すること
 ・多くを要求する大きさに仕事を設計すること
が必要であると説いています。

簡単に言うと、誰がやっても成果があがる様に作業の手順と基準を設定した上で、どんな人がその仕事を担当しても何かしらの「強み」が発揮される余地をもった大きさになるように業務を設計しなさい、と言うことです。その上で、「強み」によって人を配置することを勧めています。

「あの子は明るく活発だから、とりあえず営業で!」みたいなノリで配属し、「現場で揉まれてナンボだから…」と育てたつもりになっているのは論外なのです(笑)  昭和の頃は、たまたま時代が良かったから何とかなっただけであって、成果をあげるマネジメントとはかけ離れたやり方です。

さすがに最近は、新卒の学生をこんな方法で育てる会社は減りましたが、いまだに中途入社の社員配属では、まかり通っているのが現実ではないでしょうか。


私自身、この「現場で揉まれてナンボ世代」の最終組あたりではないかと思うのですが、このナンボ世代が上司になった時に、ほぼ100%の確率で起きる由々しき事態があります。

それは、「自らの強みによって、人を支配するという悪癖」です。

上司になるということは、過去に何かしらの成果をあげた実績があるという事です。過去に成果をあげたということは、何かしらの「強み」を活用した事を意味します。

しかし、自らの「強み」を知っている人は、ほとんどいません。真の「強み」とは、自分で意識することなく“無意識”のうちに使っているものなのです。自分が「強み」だと思っているものは、単に自分が気にしているやり方でしかありません。

この“無意識”というのが厄介なのです。

仕事に関して、
「なんでこんな簡単な事が分からないんだ?」
「なんで子供でも出来るような単純なことが出来ないんだ?」
「結局、俺がやんなきゃダメじゃないか…」
などと思った経験のある方は、要注意です。


あなたにとって単純で簡単な事は、無意識のうちに「強み」を活用した可能性があるということなのです。

もし、あなたの「強み」によって単純に見える事を、あなたの「強み」を前提とした話し方で説明したとしたら…。おそらく相手にとっては意味不明な話になることでしょう。

上司の「強み」が、上司の「権威」と結びつくと、非常に危険と言わざるを得ません。相手からすると、「意味不明な説明をしておきながら、仕事を強要した上に、怒り狂う上司…」となり得るのです。


「強み」を活用する意識を持つことは、自分自身と、周りの成果をあげる可能性を高めると共に、こうした不慮の事故のようなモチベーション低下を防ぐことにもなります。

責任ある立場に立つと、「無難に事を運ぶこと」を優先したい誘惑にかられる事もあります。そんな時、人は強みと機会ではなく、弱みと問題に焦点を当てています。「強み」に意識を向けることは、凡庸な意思決定を防ぐことにもなるのです。

「強み」という言葉を単なる“得意・不得意”と捉えるのではなく、広くとらえて活用することで、人と組織の成果はより大きなものになります。自分自身が「強み」によって視点を固定している事を知り、広い視野から「強み」を活用することが重要なのではないでしょうか。