“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

正しい答えを得ようとする悪癖がもたらすもの。  「成果をあげる上司」 は、部下をどのように育るか? -その7ー

こんばんは!
いつもお読みいただきありがとうございます。

月曜日恒例の「成果をあげる上司シリーズ」。7回目の今日も部下育成における3つの課題の中から、引き続き<①マネジメントに対する誤解>をお届けします。

 【参考:3つの課題】①マネジメントに対する誤解
           ②組織における共通の目的
           ③感情のマネジメント

本日①のテーマから、「意思決定における」誤解について。まずはドラッカーの一文を引用させていただきます。

『マネジメントにおける意思決定の重要性は一般にも認識されている。しかし、意思決定についての議論のかなりの部分が、問題の解決、すなわち答えを出すことに集中している。間違った焦点の合わせ方である。まったくのところ、最もよく見られる誤りは、正しい問いを発することではなく、正しい答えを得ることに焦点を合わせることによってもたらされている。(現代の経営-下-より)』

ドラッカーに馴染みのない方にとっては、初めて聞くワードが登場したのではないかと思います。『正しい問いを発する』という不思議ワード。これが今回の鍵です。


例えばこんなケースがありました。

とあるネットショップさんで、売上が低迷していました。原因を分析すると、主力商品Aの売上が大きく下がっていることが分かりました。そこで主力商品Aの売上を上げるべく、広告販促を打ち、タイムセール等の企画を打ちましたが、期待するような成果が得られないばかりか、販促費も利益率も悪化してしまいました。あげくの果てに、主力商品Aはセール時の価格でないと売れない商品へとなり下がってしまいました。

このケースでは、「売上不振の原因は、主力商品Aである」という分析結果に対して広告による集客とタイムセールというテコ入れを行っています。一見すると正しい対策の様に思えます。

しかし「なぜ主力商品Aが不振に陥ったのか?」という問いに対する検討が不十分だったために、ますます泥沼にはまる結果となりました。

実は、この主力商品Aが不振に陥った原因は、別のところにありました。お店の集客商材としてAの半額以下で投入したBという類似商材が、Aの不調要因だったのです。

B商材はA商材の半額以下で売っていたため、お店全体としてもA商材の落ち込みをカバーできていませんでした。A商材とB商材は客層も異なっており、限られた販促費を分散させる結果にもなっていました。


「似た様な商品群を増やせば、売上がもっと上がるだろう」と安易に考えて投入したB商材が、お店の強みを消し、販促費の分散を招き、客層すらも変えてしまっていたのです。


話を戻しましょう。

このケースでは「間違った問いに対する、正しい答え」を出し、それを実践したことにより、お店を衰退させてしまいました。

「正しい問い」を検討するチャンスは2回ありましたが、検討が不十分だったために、結果として成果のあがらない意思決定をしてしまいました。

1つはB商材を投入する時点。
もう1つはA商材の売上低迷に気付き、テコ入れを検討した時点。

どちらも「売上」を目的にしていたがために、「間違った問いに対する、正しい回答」をしてしまいました。

ここで「正しい問い」の検討が充分にされていれば、おそらく「顧客」や「自社の強み」や「投資の集中」という鉄則に気付けたのではないかと思います。A商材と社内で競合するB商材を投入するという愚策には至らなかったはずです。


人をマネジメントする立場にある人は、部下を成果と成長に向けてモチベートする責任を持っています。しかし、現実には「なかなか部下が積極的に動いてくれない…」という声が多く聞かれます。

その原因の1つは、問題に対する「有意性を感じられない対応策」にあると言えます。ストレートに言えば「無意味な指示」「一貫性のない指示」をされるのは嫌だということです。

「売上が下がっている」というのは現象に過ぎません。誤った問いに対していくら正解を探しても、それは成果に結びつかないのです。

『正しい問いを発することではなく、正しい答えを得ることに焦点を合わせること』という悪癖によって、人の生産性も成果も妨げてしまいます。

まず最初に、「正しい問いは何か?」から入ることが、自らの成果と部下の成果を高めるのではないでしょうか。