“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

セルフマネジメントによって感情は克服できるのか?

一昨日から、とある研究発表の資料をまとめていました。今回の研究発表テーマは、ドラッカーのマネジメントにおける感情エネルギーの活用、つまりは人のエネルギーについて。

ドラッカー教授は、「人間のエネルギーを生み出し、その方向づけを行なうものがマネジメントである(未来企業)」という言葉を残しています。

これぞまさに、私が気になって気になって仕方ないテーマのひとつです(笑)

 

 

人が働くことの生産性について突き詰めると、やはり最終的には「脳」と「感情」というブラックボックスに足を踏み入れることになります。

脳と感情については、まだまだ科学的に解明されていない事も多いのですが、以前と比べると分かることも随分増えてきており、その研究成果は書籍などで私たちにも手にする事ができます。

少なくとも、人の働きの生産性について考える上での材料は、かなり増えていて、今はブラック改めグレーボックスぐらいの感覚になりつつあります。

 

 

今回の研究発表にあたり、参考書籍として「ドラッカーディファレンス」という本を読んでいたのですが、実はとても違和感のある記述がありました。

正確に抜粋すると長くなってしまうので、要旨にまとめて掲載します。正しい記述は、ドラッカーディファレンスの書籍をご参照ください。


『自らの意識に気を付けていれば、感情的な場面にあっても、自らを客観的に観察できる。反応が正しいものかを考え、行動を抑制できる』

『自らの状況把握に意識を向け、異なる選択をできるようになった結果、よい人間関係と高い成果を手に出来るようになった』

『意識すればするほどに、ますます自らをコントロールできるようになる』

ドラッカーディファレンス 第8章 知識労働者のためのセルフマネジメント より要約抜粋)

 

一見すると、正しいように読める記述なのですが、私はこの記述を読んで、問題の一部しか扱っていないと感じました。ドラッカー教授の著作にある数々の記述と照らし合わせても、整合性が取れないのです。

 



この記述どおりに自らをマネジメントするならば、それは感情をマネジメントするのではなく、感情をコントロールしている状態になってしまいます。

感情をコントロールすること、正確には感情のままに暴走しないように行動をコントロールすることは、不可能ではありませんが脳の本能に反しています。

高いストレスを感じる行為であり、もしこのコントロールを高いプレッシャーを受けた環境で取り組み続けると、場合によっては「燃え尽き症候群」や「心の病」になる危険性もあります。

とても生産性の高い状態とは言えませんし、マネジメントの本質である「人のエネルギーを生み出すこと」にも反しています。

 

 

ドラッカー教授が目指したマネジメントとは、本当にこれだったのか? セルフマネジメントの使い方は、本当にこれなのか?

この謎を解く鍵は、実は日本に、禅の思想の中にあるように思います。日本文化に造詣の深かったドラッカー教授は、感情を「コントロールの対象」とは捉えておらず、感情を「単なる結果現象」と捉えていたというのが、私の見解です。

ドラッカー教授は、異質な2つ以上のものに対するアプローチとして、「バランス」と「調和」という2つの概念を使い分けます。

バランスとはどちらも犠牲にせず、均衡点を見つけるというアプローチ。調和とは新たな方向性を与えることによって、新たな相対・全体を生み出すアプローチを言います。そして方法として優れているのは調和の方だと言います。

座禅や瞑想などの世界では、感情は過去の事実に対する解釈の結果と捉えます。

一般的に「自我を手放す」と言われる行為は、自らの内側を見つめ、過去の事実に対して自分自身が抱く “ネガティブな思い込み” を、新たな解釈でとらえなおす事を指します。

感情のまま暴走しないように行為をコントロールしようとするのではなく、感情をもたらす原因の方にアプローチし、心の内に調和をもたらすことによって、ネガティブな感情そのものが発生しない状態をつくるのです。

 

あくまで私の解釈ではありますが、感情コントロール型がもたらすのは「バランス」であり、日本型の感情を手放すアプローチがもたらすのは「調和」であると理解しています。

このように考えれば、感情コントロールが行き過ぎた結果、心のバランスが崩れることも、説明がつきます。

「セルフマネジメントのみで感情をマネジメントすることは難易度が高い。外側にある、未知なるピースを埋めてマネジメントを進化させよ!」


ドラッカー教授の数々の書籍からは、このピースの存在を認識していた事が伺えます。しかし、なぜこのピースに手をつけなかったのかは、今となっては永遠の謎です。

ドラッカー教授から、われわれ日本人に委ねられた宿題なのかもしれませんね~(*^^*)

 


研究発表の結果、さまざまなご意見をいただけると思うので、それらを踏まえてさらにブラッシュアップしたものを、今後のセミナー等で提供していきたいと思います。

 

という訳で、今から研究発表です!!!
楽しんできます!!