“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

<すぐドラ #3>異なるものを、同時に扱っているという現実。

見られていることをそれほど意識せずに書いてきたこのブログですが、おととい初めて1日100アクセスを超えていました!!!  見ていただけるって、やっぱり嬉しいですね~\(^o^)/
 
 
今日の「すぐに使えるドラッカーの言葉」は、事業に関する内容ですが、実はひとりひとりの人生にも共通することのように思います。

「経済的な豊かさも大切だし、心の豊かさも大切!」とか、「自分も大切だし、周りの人も大切」のような話と、考え方は似ているのかもしれませんね~。

どれかが大切なのではなく、すべてが大切。

それぞれ異なるいくつかのものを、同時に満たすことが、これからの時代には求められていますね!!


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 「すぐに使えるドラッカーの言葉」
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ドラッカーの一言(事業のマネジメント)】

『企業にとって行うべき仕事は三つある。
  ・今日の事業の成果をあげる
  ・潜在的な機会を発見する
  ・明日のために新しい事業を開拓する

これら三つの仕事にはそれぞれ異なるアプローチが必要である。異なる問題提起が必要である。したがって結論もまったく異なったものとなる。しかしこれら三つは、切り離すことはできない。しかも同時に行わなければならない。』
(創造する経営者 P3)

 

【コメント】
われわれが事業と呼んでいるものは、質の異なるいくつかの仕事の集合体です。

個々の仕事にはそれぞれ最適なアプローチがありますが、部分最適ではなく全体のアウトプット(成果)から考えなければなりません。成果というゴールを起点に考えることで、はじめて明確な方向づけがなされ、真の成果(総合的な解決策)へとつながります。

私たちは自分の視点からしか現実を見ることが出来ない上に、部分ばかりに目を奪われがちです。この癖に左右されて全体を見失わない様に、「体系的に現実を見る」ということを習慣として身に付ける必要があります。

マネジメントは学びと実践によって身につけられる道具です。そしてマネジメントの体系に沿って現実を見るとき、「切り離すことができず、同時に行わなければならない複数の仕事」を、成果というアウトプットの視点から一つに繋げて見ることが出来るようになるのです。


 

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  <講座および読書会のお知らせ>
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【ライフ・イノベーションvol.0】
「感情エネルギー」について学び、それをドラッカーのマネジメント原理に則って人生のデザインに活用する連続セミナーのプレ講座です。プレ講座という位置づけではありますが、その日の参加だけでも十分にご満足いただけるはず! ぜひぜひ奮ってご参加くださいませ!

◇東京 5/15(日) 参加費:5000円
https://www.facebook.com/events/217820868606512/

◇札幌 5/20(金) 参加費:5000円
https://www.facebook.com/events/189418318092655/

 

 

【スカイプ de ドラッカー読書会】
主に初心者の方を対象とした読書会です。ドラッカーのマネジメントの中でも、「知識を使って働くすべての人」を対象としたセルフマネジメントの分野を扱います。
課題図書は、「プロフェッショナルの条件」です。
(スカイプにログインできる環境は、ご自身でご用意ください)

◇第1回 5月30日(月)19:30~21:00◇
(全10回コース:通期参加は45,000円/単発参加は5,000円)
 →近日お申込み開始します!

<すぐドラ #2>計画が一人ひとりの責任意識を高める。

読書会の準備をしていたら見つけた言葉。

なるほどな~。たしかに計画づくりに社員が参画している企業ほど、組織の成果も、人の成長も早いです!!

感覚だけで分かっていたことは再利用できないですが、言葉として認識すると再利用できる。これがドラッカーの素晴らしいところですね~(*^^*)


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 「すぐに使えるドラッカーの言葉」
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ドラッカーの一言(人と仕事のマネジメント)】

『計画する能力をもつほど仕事の責任を持つことができる。それだけ生産性も高くなる。いわれたことしかできなければ有害なだけの存在となる。』
(現代の経営(下) P138)

 

【コメント】
責任ある仕事をする社員を育成することは、多くの企業にとって課題とされます。また、働く人ひとりひとりが成果をあげる上でも、仕事に対する責任意識はとても重要なものです。

自ら考え、自ら計画した業務や仕事に対しては、おのずと責任の意識が芽生えます。人の本質とは、こういうものです。そこから得られたフィードバックを次の計画に反映できるような環境があれば、それが好循環を生み出し、さらなる成果へとつながる事でしょう。

他人が作った計画を与えられるだけの人材は、いずれ「いわれたことしかできない存在」となります。また、せっかく計画に関与できても、他者評価や結果責任ばかりに意識を向けざるをえない環境では、やはり「いわれたことしかできない存在」となります。

自ら考え、自ら計画し、自ら評価測定する。このような働き方が出来るよう、経営者は組織をマネジメントしていくことが重要です。そして働く人ひとりひとりが、自らの「計画する能力」を高めていかなければなりません。


 

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<すぐドラ>試験配信、はじめます~。

メルマガ化の試験も兼ねて、ショートバージョンのブログ配信を始めてみます。

仮タイトルは、
「すぐに使えるドラッカーの言葉」。
略して、「すぐドラ」
どこかで聞いたことあるような響きですが…(^^;;

ドラッカーの言葉の中からハッと視点を変える一言や、仕事のお悩み解決につながりそうな一言を、私の個人的雑感つきでお届けします。解説っぽい時もあるかもしれませんが、あくまで「個人的な雑感」です(笑)

テーマは4分類にして、ひとまずローテーションで書いてみようと思います。
 ・セルフマネジメント
 ・人と仕事のマネジメント
 ・事業のマネジメント
 ・変化を読む目
おのおの対象が経営者だったり、普通に働く人だったりしますが、当面はごちゃまぜのまま配信してみようと思います。

あくまでまだ試験なので、少しづつ書き方や内容は変えていくと思います。その辺りはご容赦ください…<(_ _)>

 

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ドラッカーの一言(セルフマネジメント)】
『成果をあげるためには、意思決定の数を多くしてはならない』
(経営者の条件 P154)

 

【コメント】
ドラッカーは、「個々の問題ではなく、根本的な問題に対しての意思決定をしなさい」と言います。なぜなら、一つひとつの意思決定には、それだけの労力が必要とされるから。

意思決定は人とのコミュニケーションの問題とも関連します。たとえ目のまえの課題そのものはシンプルだとしても、コミュニケーションを軽視して決定した意思決定は、あとあと人間関係のトラブルを招くかもしれません。

もしも身の周りで、「そのルール変更、聞いてませーん (^^;;」のような事件が頻発したら、仕事もなかなか成果があがりませんよね。意思決定は組織全体のエネルギーにまで大きく影響するからこそ、根本的なものに絞りこみ、原理に沿った手順で検討することが重要なのです。

とはいえ、いつまで経っても意思決定をしないのは本末転倒。問題の奥の奥まで探る姿勢と、最後にエイッと決める勇気、両方ともが大切ということですね!

 

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「いまここ」にしか自分は存在しない。

「今、ここに生きること」

これこそが真の自分と出会える唯一の道であり、幸せに生きる唯一の方法であると言われます。人によっては、これこそが悟りへの道であるとまで言う人もいます。

色々な場所で聞くので、私も一般教養としては理解していました。
「みんなが言うから、きっとそうなんだろう」
くらいのレベルで…(笑)

 

 

今年のゴールデンウィークは、久しぶりに内なる自分との対話の時間を、たっぷりと取ることができました。神社めぐりをしたり、禅の思想や座禅の手順について調べたり、瞑想をしてみたり・・・。

今年に入ってから身の回りの変化が大きく、自分を見つめなおす時期に来ていたこともありますし、たまたま「ドラッカー×禅」を次の研究テーマに設定したことも重なって、どうしても自分ごととして「いまここ」を体感してみたい衝動が沸き上がってきたのです。

いま思えば、普通こんなことは我流でやるものではなく、きちんとしたお師匠様について御指導いただくものなのでしょうが、、、何も考えずに、、、私、、、


やっちゃいました・・・(笑)

 

 

 

禅についてきちんと調べてみると、まず初めに気づいたのは、これまで私はとてつもなく大きな勘違いをしていたという事でした。

「自分を見つけるため」に、内なる自分と対話していたのです。

座禅とは「自分を消す」もの。自我を取り払い、あるものをありのままに受け取る事。そもそもの発想が真逆です。

どうなるか分からない不安もありましたが、「自分を消すこと」の向こう側に何かがあると言うなら、素直にやってみようと覚悟を決め、ひたすら自分を消し、ただ目の前にあるものを観るという事に徹してみました。

 

 

実際にやってみると、ずいぶん違った景色が見えました。

まず初めに、私たちが「自分」と思い込んでいるものは、単なる言葉や概念であったという事。

たしかに私たちの身体の一部は、自分の意のままに動かすことが出来ます。しかし、生まれた瞬間はおそらく、自分の身体が自分だという認識はなかったはずです。自分の名前を自分だと認識できるようになったのも、せいぜい1~2歳になってから。自分と他人を比べるようになったのは、おそらく3歳くらいから。

はじめは何もなかったところに、私たちが「自分」という概念を生み出して、そこに縛られている構図が見えてきました。



そして、私たちは「自分」という社会的な認識を育てながら、裏で「自分ではないもの」も同時に生み出しています。

分離させることで、はじめて認識できる。

認識するための分離ですが、ここから比較が始まり、優越感や劣等感も生まれ、結果、思い通りにならない苦しみが生まれていくのです。

さらに私たちは、「いまここ、ではないもの」という分離も生み出しています。

「昔はこうだった」とか、「将来はこうなりたい」とか・・・。目の前にある「いま」をそのまま見るという事をせず、時間までもを分離させて、ますます苦しんでいるのです。

 


そもそも存在しなかった「自分」という概念を 「自分」と思い込み、目の前にあるものだけが真実なのに「過去」や「未来」という概念の方を真実だと思い込み、結果、私たちは苦しみの中に生きています。

自分で作り出した概念に、いつの間にか自分がコントロールされてしまっている状態。まるでミイラ取りがミイラです・・・。

 



この世界で生きていく上で、認識するという人間の機能は、なくてはならないものです。決して認識そのものが悪い訳ではありません。

ただ、認識という行為の副作用として起きる分離について、私たちはもう少しだけ知らなければならないのかもしれません。

自分でつくりあげた概念にコントロールされるのではなく、概念として使いこなすためには、一般教養としてこういう話がもっと常識となる必要があるように思うのです。

もちろん、体感として感じることが一番ではありますが、少なくとも知識として身に付ける人が増るだけでも、不毛な争いは減るように思います。

 



「いまここ」を見ること。観ること。

先人から受け継がれてきた通りにやってみると、たしかにその向こう側に、これまで常識としてきた自分とはまったく異なる自分がいました。

もはや、それを自分という言葉で呼んでよい存在なのかは、分かりませんが…(笑)

 

正直なところ、この経験をどのように使えばよいのか、まだアイディアはありません。ただ、とても大切な事を体感として感じられたので、いずれどこかで誰かの役にたつ形に繋がっていったら良いな~、、、と思います。

ドラッカーのマネジメントって、こんなにもシンプルだったのか…。

ドラッカーのマネジメントを学ぶようになって、4年とちょっとが過ぎました。周辺知識も含めると、どう少なく見積もっても、かるく3000時間は投入してきたと思います。

そして、ようやく理解できました。
マネジメントの全体像が。

難解だと思っていたドラッカーは、信じられないほどシンプルでした。こんなにもシンプルだったのに、我ながら勘が悪すぎ、しかも時間かかりすぎです…(^^;;

いろんな人に怒られるかもしれませんが(笑)、あえて今日は、マネジメントの背骨だけを抜き取って、単純化してみたいと思います。

 


ドラッカーのマネジメントは、基本的には4つの分野に分類できます。
 ・事業のマネジメント
 ・仕事のマネジメント
 ・人のマネジメント
 ・セルフマネジメント

そして、それぞれに目的があります。
 ・事業のマネジメント:顧客を創造する
 ・仕事のマネジメント:仕事(価値転換プロセス)を生産的なものとする
 ・人のマネジメント:人間のエネルギーを最大化し、方向づける
 ・セルフマンネジメント:自らを成長させ、自らを精神的な存在へと高める

これらマネジメントの4分野を同時並行で動かせば、基本的にマネジメントは機能します。難しく考える必要はなく、4分野がバランスよく効果的に機能するよう、そこだけに意識を向けていれば、全体も動くようにマネジメントは設計されています。

 


例えるなら、4つのタイヤそれぞれにモーターのついた車のようなイメージです。4つのタイヤそれぞれが機能し、全体としてのバランスも取れているならば、運転しやすい車(成果のあがりやすい組織)になりますし、バランスが悪ければ力づくでコントロールしないと目的地にはたどり着けない車になります。

どこか一つのタイヤばかりが加速する車は、すぐにスピンしてしまいます。売上や利益ばかりを気にして人のマネジメントが行き届いていない企業、人間関係ばかりに時間を奪われ顧客が置き去りになっている企業、これらは成果をあげ続けることが出来ません。

 


4つの車輪をつなぐものが「成果」です。車で言うならば、車体そのものと言っても良いかもしれません。

売上や利益ではなく、重要なのは成果です。私的な経済活動を、社会全体にとっての公益にもつなげることを意味する「成果」。社会・組織・人、これらすべてにとって必要な「成果」があがるよう、はじめから事業を設計するという事が重要です。

高い「成果」を目指すことで、おのずと4輪のバランスを整え、全体の加速・走行性能に優れた車を設計する必要性が出てきます。だから、ドラッカーは「成果をあげよ!」と言っているのです。

 

 

ドラッカーの言葉は、時に理想主義的でもあります。そして目指すところも崇高の極みにあります。

事業のマネジメントの目的が「顧客の創造」であることも、セルフマネジメントのゴールが「精神的な存在(いわゆる悟りの境地)」であることも、すべては組織をして極めて高い成果を目指し続けるために、そして人として高い極めて高い成長を目指し続けるために、あえて考えうる最高の高みを示しているのだと思います。

まさに、「神々が見ている」の言葉の通りです。

これまで3000時間以上という大量の時間を投下してきましたが、ようやくこれで自分でも確信を持てました。

ドラッカーは、間違いなく本物です。
それも、本物中の本物です!

社会がよりよく機能するために、組織が高い成果をあげるために、そして一人ひとりの人間が豊かで幸せな人生を送るために。ドラッカーのマネジメントは、すべての人の幸福に繋がっていると、ようやく確信を持って断言できます。


単なる成果をあげる手段としてでも良いですし、お仕事や人間関係の悩み解決でも構いません。人生の目的を知るための道具でも良いと思います。

もっと多くの方に、ドラッカーのマネジメントに触れていただきたい。

あらためて今、そう感じています。

 

強みを磨くということ。ドラッカーと禅に見る、セルフマネジメントのゴール。

ドラッカーは、成果をあげる習慣的資質のひとつとして、「人の強みを生かす」という事をあげています。「人の強みを生かし、弱みを意味のないものとすることは組織特有の機能である」とも言っています。

個人の仕事においても、組織の仕事においても、「強み」からしか成果の元となる卓越性は生まれません。しかし、私たちは意識していないと、出来ないことや苦手なこと、つまり「弱み」ばかりに目を奪われてしまいます。

この癖を正し、強みに目を向けることこそが成果をあげる条件となる訳ですが、ここで一つの問題にぶち当たります。

人の意欲やモチベーションを生み出すためのアプローチと、強みを生かし、弱みは意味のないものにするというアプローチが、一見すると矛盾するようにも読めてしまうのです。

 

人の意欲やモチベーションを引き出すアプローチとは、自我と向き合い、手放すこと。つまり、自分自身の感情と向き合うことに他なりません。その中には当然のことながら、ネガティブな感情との対峙も含まれます。

しかし、弱みを無視して強みだけを使えば良いという言葉の解釈次第では、「ネガティブな感情≒弱み」と位置づけ、自我と向き合うことを放棄して良いようにも、読めてしまうのです。

 

この矛盾を解決する糸口をずっと探していたところ、ドラッカー日本画について述べている箇所で、以下のような記述を見つけました。


『禅の伝統は数百年にわたり、人間の強みを発展させることに焦点を合わせ、やがて登場してくる人間に関する理論と、自己実現に関する理論の前触れとなった。仕事は人格の延長であり、人格は仕事の抽出であり、達磨の精神を描くには自らがふさわしくなければならない。 (すでに起こった未来)』


この物語に登場するのは、有名な達磨図を書き残した白隠慧鶴禅師。臨済宗中興の祖と言われる有名な禅僧です。

彼は禅の始祖達磨を描くのにかかった時間を、「10分と80年」と答えたと言います。達磨を描くだけの精神性を身に付けるために、80年という時間を要したのです。

ドラッカー教授はそんな白隠禅師のことを、このようにも記述しています。

 

『彼は人間の精神的な可能性を究め、精神的な力を会得し、自らを精神的な存在に変えた人間である。(中略) 自らの努力によって内部の神性を高め、精神的な完全を達成した。そのような生き方は人間的ではない。精神的であって、実存的な生き方である。知識ではなく叡知に、力ではなく自己規律に、成功ではなく卓越性に焦点を合わせた生き方である。 (すでに起こった未来)』

 

白隠禅師が開発した修行法に「内観法」というものがあります。ひと昔前は、心の病にかかった方の治療に使われる事が多かった様ですが、現在はアスリートや経営者の方が自分自身を見つめ、向き合うための場としても活用されています。

私自身も4年前に、1週間の集中内観を経験しました。

達磨禅師や白隠禅師の修行と比べたら足元にも及びませんが、この経験があるおかげで、禅の修行の意図するものは理解できます。

「己を見つめ、とらわれていた自分自身に気づき、手放すこと」

この繰り返しの中にこそ、ドラッカーの言う精神的な存在としての人間は存在します。そして精神的存在としての完成を目指す生き方の中にこそ、人の強みを発展させる叡知は存在するという事です。

 

 

ドラッカーのマネジメントは、書いてある言葉を道具としてそのまま活用するだけでも、十分に成果をあげることが出来ます。

しかし、ドラッカー自身が「人の意思、個性、感情、欲求、情熱などの要因は無視する」と語っている通り、あえて人の内面には触れないことによって、マネジメントを客観的かつ体系的な道具として完成させたという側面もあります。

その部分を、読み手が補完しながら読むことで、はじめてドラッカーが意図した深遠なる世界が見えてきます。

今回で言うならば、セルフマネジメントのゴールとは、精神的な完成を目指す継続学習(修練)であり、一生続いていくものだと言うことです。

ドラッカーは、現在の日本の教育に対して、このように警鐘を鳴らしています。

『今日、日本では、人間や継続学習に対する禅の考え方にうかがわれる洞察や叡知は危機に直面している。今の日本の教育は、学習の目的を次の試験、次の昇進、次の外的な報酬のための準備と見る西洋や中国の考えを、さらに極端に押し進めた方向に進んでいる。(中略)

はたして日本は、いまなお精神的人物がとしての達磨を描き、「どふ見ても」と言えるようになる学習を取り戻し、学習を本来あるべきものとすることができるのだろうか。(すでに起こった未来)』

今回引用した論文は、1979年に書かれたものですが、今の日本が直面する課題そのもと感じるのは、私だけでしょうか。

セルフマネジメントによって感情は克服できるのか?

一昨日から、とある研究発表の資料をまとめていました。今回の研究発表テーマは、ドラッカーのマネジメントにおける感情エネルギーの活用、つまりは人のエネルギーについて。

ドラッカー教授は、「人間のエネルギーを生み出し、その方向づけを行なうものがマネジメントである(未来企業)」という言葉を残しています。

これぞまさに、私が気になって気になって仕方ないテーマのひとつです(笑)

 

 

人が働くことの生産性について突き詰めると、やはり最終的には「脳」と「感情」というブラックボックスに足を踏み入れることになります。

脳と感情については、まだまだ科学的に解明されていない事も多いのですが、以前と比べると分かることも随分増えてきており、その研究成果は書籍などで私たちにも手にする事ができます。

少なくとも、人の働きの生産性について考える上での材料は、かなり増えていて、今はブラック改めグレーボックスぐらいの感覚になりつつあります。

 

 

今回の研究発表にあたり、参考書籍として「ドラッカーディファレンス」という本を読んでいたのですが、実はとても違和感のある記述がありました。

正確に抜粋すると長くなってしまうので、要旨にまとめて掲載します。正しい記述は、ドラッカーディファレンスの書籍をご参照ください。


『自らの意識に気を付けていれば、感情的な場面にあっても、自らを客観的に観察できる。反応が正しいものかを考え、行動を抑制できる』

『自らの状況把握に意識を向け、異なる選択をできるようになった結果、よい人間関係と高い成果を手に出来るようになった』

『意識すればするほどに、ますます自らをコントロールできるようになる』

ドラッカーディファレンス 第8章 知識労働者のためのセルフマネジメント より要約抜粋)

 

一見すると、正しいように読める記述なのですが、私はこの記述を読んで、問題の一部しか扱っていないと感じました。ドラッカー教授の著作にある数々の記述と照らし合わせても、整合性が取れないのです。

 



この記述どおりに自らをマネジメントするならば、それは感情をマネジメントするのではなく、感情をコントロールしている状態になってしまいます。

感情をコントロールすること、正確には感情のままに暴走しないように行動をコントロールすることは、不可能ではありませんが脳の本能に反しています。

高いストレスを感じる行為であり、もしこのコントロールを高いプレッシャーを受けた環境で取り組み続けると、場合によっては「燃え尽き症候群」や「心の病」になる危険性もあります。

とても生産性の高い状態とは言えませんし、マネジメントの本質である「人のエネルギーを生み出すこと」にも反しています。

 

 

ドラッカー教授が目指したマネジメントとは、本当にこれだったのか? セルフマネジメントの使い方は、本当にこれなのか?

この謎を解く鍵は、実は日本に、禅の思想の中にあるように思います。日本文化に造詣の深かったドラッカー教授は、感情を「コントロールの対象」とは捉えておらず、感情を「単なる結果現象」と捉えていたというのが、私の見解です。

ドラッカー教授は、異質な2つ以上のものに対するアプローチとして、「バランス」と「調和」という2つの概念を使い分けます。

バランスとはどちらも犠牲にせず、均衡点を見つけるというアプローチ。調和とは新たな方向性を与えることによって、新たな相対・全体を生み出すアプローチを言います。そして方法として優れているのは調和の方だと言います。

座禅や瞑想などの世界では、感情は過去の事実に対する解釈の結果と捉えます。

一般的に「自我を手放す」と言われる行為は、自らの内側を見つめ、過去の事実に対して自分自身が抱く “ネガティブな思い込み” を、新たな解釈でとらえなおす事を指します。

感情のまま暴走しないように行為をコントロールしようとするのではなく、感情をもたらす原因の方にアプローチし、心の内に調和をもたらすことによって、ネガティブな感情そのものが発生しない状態をつくるのです。

 

あくまで私の解釈ではありますが、感情コントロール型がもたらすのは「バランス」であり、日本型の感情を手放すアプローチがもたらすのは「調和」であると理解しています。

このように考えれば、感情コントロールが行き過ぎた結果、心のバランスが崩れることも、説明がつきます。

「セルフマネジメントのみで感情をマネジメントすることは難易度が高い。外側にある、未知なるピースを埋めてマネジメントを進化させよ!」


ドラッカー教授の数々の書籍からは、このピースの存在を認識していた事が伺えます。しかし、なぜこのピースに手をつけなかったのかは、今となっては永遠の謎です。

ドラッカー教授から、われわれ日本人に委ねられた宿題なのかもしれませんね~(*^^*)

 


研究発表の結果、さまざまなご意見をいただけると思うので、それらを踏まえてさらにブラッシュアップしたものを、今後のセミナー等で提供していきたいと思います。

 

という訳で、今から研究発表です!!!
楽しんできます!!