“もくてき”のデザイン -成果をあげる組織づくり・人づくりのヒントー

働くことを通して「豊かさ」や「幸せ」を味わう人を増やし、人のエネルギーを最大化する組織・チームをつくること。ドラッカーのマネジメントや、脳・メンタルなどの記事を中心に、成果をあげる組織・チームづくりのヒントをお届けするブログです。

「有意性」の基準が、成果の要である。

こんばんは!
今日もお読みいただき、ありがとうございます。

本日のテーマは、「有意性と成果」について。

いきなり引用から入って恐縮ですが、
ドラッカーの著書、『経営者の条件』の中に、
以下のような記述があります。

“成果をあげる決定の要は、有意性の基準、特に価値の基準についての 決定である” (複数の文章にまたがっていたので、便宜上、文意の変わらないように1文にまとめてあります)

ここで、あまり聞きなれない言葉が登場します。
有意性」というワードです。
しかも、これが成果をあげる意思決定の要だと言っている訳です。
とっても気になりませんか??


もともと、「有意性」という言葉は、
統計学などで使われる事の多い用語なのだそうです。

バラバラに分散した複数のデータに、
一定の法則性が認められそうな場合に、
何かラベルを付けて、新たな意味を付与することを指します。

偶然とは考えられない確率で起こるから、きっと意味があるに違いない! と、
ラベル付けする行為を、「有意性がある」と言うわけです。

統計学の場合は、科学的なデータが裏付けとして存在しますが、
どんなに科学的であっても、「有意性」を認めるか?認めないか?は、
人間の意思によって決まります。

今では誰もが「地球は太陽の周りをまわっている」と知っていますが、
たった数百年前には、「地動説」を信じている人はいませんでした。

科学的な証拠が積み重なってきても、宗教的に異端な考えであったので、
地動説を証明するのは、まさに命がけでした。
もちろん一般人は、そんな説を聞いたこともなかったので、
本気で「神様が作ったこの地球の周りを、すべての物が回っている」と
長年にわたって信じていた訳です。

このケースでも分かる様に、「有意性」を決定づけるのは、
人の意思によるものであって、客観的事実とは無関係なのです。


さて、話をビジネスにおける意思決定に戻しましょう。

厄介なことに、ビジネスにおける意思決定では、
数値化できる対象だけではなく、数値化できない対象までもを
取り扱わなければなりません。

データとは、過去の現実を、何かの意図にもとづいて数値化したものです。
未来の意思決定をする上で、データは必ずしも万能ではありません。

「新しい商品の開発を進めるか?」という意思決定をする際、
過去の数値化されたデータをフルに活用しても、
おそらく正しい意思決定ができないのは、ご存知の通りです。
もし全てをデータに依存して意思決定すれば、
間違いなく手痛い失敗が待っていることでしょう。

このような必ずしも科学的に判定できない意思決定に対して、
私たちは何を「有意性」の基準とすれば良いのでしょうか?
 
 
 

その答えは、人と人との「合意」の中に存在します。
むしろ、「合意」の中にしか、存在し得ません。

『いかなる貢献によって、顧客は私たちの有意性に「合意」してくれるか?』
この、合意点を仮説を立て、自らの行動を選択する行為のことを、
私たちは “意思決定” と呼んでいるのです。

合意点は多岐に渡ります。
たとえば、
・顧客はいま、何に意味を感じているのか?
・顧客の要望に近づくためには、複数ある選択のうち、何を実現するのか?
・どんな条件をクリアすれば、顧客の求める意味は満たされるのか?
など、挙げればきりがありません。
もちろん、この中には数値的な合意点も含まれることでしょう。

現実を俯瞰し、より多くの合意点を探し出せたものが、
より大きな成果へと近づいていきます。

そのためには、組織の内部に多様な意見を奨励しなければなりません。
反対意見も含め、人によって見え方の違う、様々な世界を承認し、
合意点を探らなければならないのです。


有意性の基準を決定するとは、
企業自らが、より深くお客様を知ろうとする事であり、
より深く自分たちの強みを知ろうとする事であり、
より広く現実を認識する事に、他なりません。

自社の貢献そのものを定義する行為であり、
つまりは、組織の目的そのものへと直結する行為なのです。

結局のところ、すべてのスタート地点は、
「お客様は、自分たちの何に意味を感じているか?」
なのかもしれませんね!